コンテンツ化された苦悩

憎み憎まれて生きるのさ

23歳ニートの人生がダメになっていくドキュメンタリーです

世界の終わりに独りは嫌だ

 世界の終わりと言えばSEKAI NO OWARI

 人生で初めて付き合った女の子が好きだったバンド。ローマ字表記じゃなく「世界の終わり」名義だったころからのファンで、初の武道館LIVEに行くとか言ってたからかなり初期だったのではないか。それにしても「世界の終わり」っていうバンド名。初めて彼女の口から飛び出た時は度肝抜かれた。3回くらい「え?なんて?」って訊き返した。随分ふざけたバンド名だなあって。由来を聞いても「いやいやいや、それは「世界」の終わりじゃなくて「お前」の終わりだろ。勝手に世界終わらせんなオイ」って言って反論したい気持ちになった。売れた今となっては何も言えないが。ポップカルチャーにはちぎれんばかりに尻尾を降るよ俺は。

 今なら、分かる。

 今の俺がもしもバンド組むとしたら「太陽系の終わり」とか「銀河の終わり」とかそういう名前を付けてしまうだろう。実際に終わってるかはともかく自分自身が本当に人生終わったみたいな精神状態に陥ると「世界が終わる」ことしか考えられなくなる。

 「世界の終わり」というワードをタイトルに取り入れている小説も多い。

 ここで挙げた3つのタイトルはいつ読んだかはっきりしないけど、たしか3つとも世界が終わらない話だったように覚えています。「世界」というのはどこまで行っても「自分」の生きる世界であってそれが終わるときが「世界の終わり」なんだから。自分がいなくなっても、変わらず世界は在り続けるが、ある意味では終わる。そういうことなんだと思う。

 

 坂口安吾の書いた「文学のふるさと」という評論に出てくる芥川龍之介のエピソードが好きだ。

晩年の芥川龍之介あくたがわりゅうのすけの話ですが、時々芥川の家へやってくる農民作家――この人は自身が本当の水呑みずのみ百姓の生活をしている人なのですが、あるとき原稿を持ってきました。芥川が読んでみると、ある百姓が子供をもうけましたが、貧乏で、もし育てれば、親子共倒れの状態になるばかりなので、むしろ育たないことが皆のためにも自分のためにも幸福であろうという考えで、生れた子供を殺して、石油罐かんだかに入れて埋めてしまうという話が書いてありました。
 芥川は話があまり暗くて、やりきれない気持になったのですが、彼の現実の生活からは割りだしてみようのない話ですし、いったい、こんな事が本当にあるのかね、と訊ねたのです。
 すると、農民作家は、ぶっきらぼうに、それは俺がしたのだがね、と言い、芥川があまりの事にぼんやりしていると、あんたは、悪いことだと思うかね、と重ねてぶっきらぼうに質問しました。
 芥川はその質問に返事することができませんでした。何事にまれ言葉が用意されているような多才な彼が、返事ができなかったということ、それは晩年の彼が始めて誠実な生き方と文学との歩調を合せたことを物語るように思われます。

  救いようのない事実が、虚実を巧みに操るストーリーテラーであったはずの芥川龍之介を圧倒する瞬間。この部分は何回読んでも、感動してしまう。こんなエピソードが本当にあったかは知らないけど。坂口安吾は童話や芥川龍之介のエピソードを引用しながら「救いようのない話」についてこう言及する。

そこで私はこう思わずにはいられぬのです。つまり、モラルがない、とか、突き放す、ということ、それは文学として成立たないように思われるけれども、我々の生きる道にはどうしてもそのようでなければならぬがけがあって、そこでは、モラルがない、ということ自体が、モラルなのだ、と。

 

あとは、ラース・フォン・トリアー監督の「メランコリア」という映画。

ある日、地球に「メランコリア(憂鬱)」なる星が落ちてくるのが分かって、最終的にすべてをぶっ壊すという何の救いもない映画なんだけど。その映画の中では、星が落ちてくることを知ったときに普通の人はパニックになって自殺したり色々やるんだけど、精神を病んでいる主人公だけは妙に冷静で落ち着いている。そこには「本当にまともじゃない状況になったときは、まともじゃないやつが逆に普段通りでいられる」という皮肉っぽいメッセージが込められている。らしい。監督が言うには。

 

つまり、今の俺だ。世界が終わる系の話ばっか求めている。精神状態がそういう話にマッチしているようです。文学部だったのに、主に漫画ばかり読んで。漫画の中の「世界の終わり」の如何に魅力的なことよ。「デビルマン」「AKIRA」「ドラゴンヘッド」…はもう王道中の王道だけどちゃんと読んでないのであえてここでは触れません!にわかですいません。記事のタイトルには拝借しましたが。あえて俺だけの「世界の終わり」ベストセレクションを紹介しようと思います。

 

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に

 一発目はこれしかない。これもある意味王道だけど、初めて見たのが大学4年のBSプレミアムで再放送やっていた時でその時も十分面白かったけど、今見ると何倍も面白いのは確実に俺の精神状態とリンクしていると思う。途中の「甘き死よ来たれ」という曲がかかる場面が素晴らしすぎる。「秒速5センチメートル」が「One more time, One more chance」のPVだとしたら、この映画は「甘き死よ来たれ」のPVだと思う。もちろん良い意味で。どこがいいかと言ったらまず曲が良い。劇中のアニメーションがはちゃめちゃやってわけわかんないことになってる一方で、分かりやすくて気持ちいいメロディーのPOPソングが流れていて、取り合わせとしては違和感が半端ないんだけど、これしかないって気持ちにさせてくれる。最初は後ろで小さい音で流れているのに、白くてでっかい綾波レイが体を起こすと同時に曲の音量が一気に上がる瞬間のカタルシス。何回観ても魔法がかかってる。映画自体というよりこの曲が好きなのか俺は。「秒速5センチメートル」で言うとコンビニでかかってる「One more time, One more chance」が急にでっかくなるところの盛り上がりといえば分かりやすいだろうか。俺の拙い表現力だと「秒速5センチメートル」しか引き合いに出せるものがないのだ。

なるたる

鬼頭莫宏。つい先日、読み終えて無事に虚無に叩き落された作品。なんにでも変身できる「竜の子」と呼ばれる生き物を手に入れた少年少女の話。ものすごく暗いデジモンみたいなものだ。何にでも変身できる能力を利用したバトルものかと思ったら中盤以降から話のスケールがでっかくなって最終的に主人公以外全員死ぬ。途中のいじめと拷問のシーンを読んで「この作者は明らかに精神を病んでいる」と思った。むしろそのシーンの凄惨さが抜きんでているせいでラストのインパクトが薄れている感じさえある。作中人物たちがそれぞれ異なった目的で動き回り、かつ含みを持たせた会話が多いので一回読んだだけではなにがなんだか分からない。序盤から忍ばせてある伏線も多く設定もすごく細かいから読み終えても物語が終わらないで頭の中に残る感じがする。読み終えた次の日は死んだ目で解説サイトをめぐる羽目になった。竜の子の名前にもそれぞれ由来や元ネタがあるので、「なぜこんな名前なのか」とか調べたりすると「はえ~」てなる。ただ、読み返すにしても家にあまり置いておきたくない作品でもありますね。「夢はでっかく地球サイズ」とか「未来へ贈るメルヘン」とかキャッチコピーで読者を油断させて突き落としてくるのが怖い。

ミルククローゼット

富沢ひとし作品。上に挙げた「なるたる」の作者がぎりぎりのところで、物語を商業作品にしたてあげている分かりやすさ、をフルスイングでぶん投げているような潔さがある。つまり死ぬほど分かりにくい。並行世界にワープできる病気になった子どもたちが、何にでも変身できる生命体と融合してなんかやる話だったと思う。これだけだったら「なるたる」と「ぼくらの」とハーフアンドハーフみたいで面白そうなのに。途中から並行世界の構造とか、宇宙の成り立ちの説明みたいなのが始まって「どゆこと???」と思いながら読むことになる。そして、ネットを探しても解説してくれるサイトがあまりない。最終的に並行世界を統合して新しい宇宙を生み出そうとかそういう話になった気がする。漫画なのに「何回読んでも話が分からない」という貴重な体験をさせてくれる素晴らしい作品。あと並行世界の動物のデザインのセンスが独特でものすごく気持ち悪いので是非読んで欲しい。まさに異次元て具合の造形。目とか口とか手とか、普通はこうあるべきみたいな固定観念から自由になった動物たちがいっぱい出てくるので面白い。誰も知ってる人がいないので、漫画好きの人に舐められないように心の奥にストックしてる作品でもある。「ミルククローゼット」知ってたら通みたいな風潮を作っていきたい。

世界の終わりの魔法使い

西島大介セカイ系のミニマルといった感じの作品。少年と少女、恋と魔法。まったく無駄がなくて勢いで駆け抜けてく爽快感。この勢いは書き下ろしだからかな。絵柄がものっそいPOP。こんなシンプルでかわいい絵があってよいのだろうか。この人の作品の中で一番分かりやすくまとまっていて面白いと思う。「世界の終わり」というか厳密には「世界がもしすべてコピーだったら?」系の話だったような。魔法が当たり前の世界で、魔法が使えない少年が魔女のために頑張る話。恋が全てを解決してくれるから、それでいいんだという気しかしない。めっちゃ盛り上がる場面で主人公が発する「魔法なんて信じない。でも君は信じる。」は超パンチラインなのに、著者の他の本のタイトルに使われて悲しかった。この話が一巻でシリーズ化されているけど、俺はこの作品が好きすぎるので続きを読む気になれないのです。

 

真説 ザ・ワールド・イズ・マイン

とりあえず、めっちゃブ厚い。俺が持ってる中であまり読み返さない漫画暫定一位はこの作品である。これも「世界の終わり」系の王道だけど。とにかく絵が濃いキャラが濃い話が濃い。「トシモン」というテロリスト二人組と「ヒグマドン」という熊のバケモノが日本をめちゃくちゃにして最終的に地球が滅ぶ。今読むと災害やテロに対する政府の対応が群像劇風に描かれるのが「シンゴジラ」っぽいなと思う。もちろん「シンゴジラ」より先にこういう描き方する新井英樹さんの先進性が凄い。テロリストの「トシ」の母親が追い詰められて自殺する場面や、「トシ」が潜伏した家の親子を惨殺する場面があったりして色々容赦ないなあと思う。個人的には首相のユリカンというキャラが好きだったけど、初登場のキレっぷりをずっと維持してほしかった。作品全体に「全部ぶっ壊してやる」的な野蛮な衝動が匂い立っていて、それがこの作品を傑作足らしめているけど、読むには相当エネルギーと根気がいるような。重みがすごい。物理的にも物語的にも。

 

 バイオーグ・トリニティ

俺の一番好きな小説家が初めて連載で漫画原作を手掛けた作品!しかも作画が大暮維人ときたもんだ。大暮作品は読んだことないから、ほぼ舞城王太郎目当てだったけど、大学一年に初めて発売された一巻を読んだときのあの衝撃は凄まじかった。こんな緻密な絵で舞城のストーリーが描かれるなんて、と。そっから発売されるたびに近所の本屋さんへダッシュしたものでした。最終巻が発売されたのが今年で、十代の終わりから23歳まで最高に幸せな漫画体験をありがとうございました、と言いたい。リアルタイムで連載してたからひときわ思い入れが強い。これもかなり容赦なく世界が終わる話で。セカイ系っていうかヒロインそのものが世界で、それに恋をした少年が世界の秘密に挑むといった感じ。舞城の青臭いモノローグが好きだったからそれがふんだんに盛り込まれてるのと、学生が主人公で友達と四苦八苦しながら世界の秘密を解き明かすみたいなワクワク感があってすげーよかった。キャラ同士のくだらない会話がいちいちセンスある。舞城作品によくある「愛とは何か?」「世界とは?」みたいな哲学的な問いを上手く漫画に落とし込んでて、控えめにいって最強の原作・作画タッグだと思いました。(大暮さんは連載終了後すぐに『化物語』のコミカライズやっているけれど、次はメフィスト賞つながりで佐藤友哉鏡家サーガやってくれよ)

 

劇場版 NEON GENESIS EVANGELION - DEATH (TRUE) 2 : Air / まごころを君に [DVD]
 

 

 

新装版 なるたる(1) (KCデラックス アフタヌーン)
 

 

 

 

 

 

 

 

真説 ザ・ワールド・イズ・マイン (1)巻 (ビームコミックス)

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