コンテンツ化された苦悩

憎み憎まれて生きるのさ

23歳ニートの人生がダメになっていくドキュメンタリーです

ニートが公務員試験に落ちた話

 筋肉少女帯の「香菜、頭を良くしてあげよう 」という歌がある。名曲なんて安っぽい褒め言葉を使うのが躊躇われるほど大名曲なので皆さんもご存知だろうが。中学生の時に友達に筋肉少女帯のベストアルバムを借りて聴いてから、ずっと好きな曲で、サブカル男のみっともなさを皮肉っぽく歌ったラブソングである。歌の中で自分のバカさ加減を「犬以下なの」と自嘲する女の子に向かって男はこう呼びかける。

香菜、君の頭僕がよくしてあげよう
香菜、生きることに君がおびえぬように
香菜、明日 君を図書館へ連れていこう
香菜、泣ける本を 君に選んであげよう
香菜、いつか恋も終わりが来るのだから
香菜、ひとりででも生きていけるように

 一番良いところを抜き出した。この歌詞が本当に何回聴いてもズシンとくる。聴いたことない人は聴いてください。命令。香菜という女の子に付き合っている男が主人公(こういう言い方で合ってるのか)で、どうにかしてバカな恋人の頭を良くしようと名画座や図書館に連れて行こうとする。「生きることに君がおびえぬように」と。ただ歌詞の全部を読んでも香菜からは「生きることにおびえている」なんて高尚な悩みは読み取るのは難しい。無邪気に笑い、モフモフとジャムパンを食べ、名画座へ行っても途中で寝ちゃうような人だということくらいしか分からない。要はあっけらかんと生きてる脳天気で明るい女の子に「いつか恋も終わる」なんて悲観的な考えをしたネクラな男が自分のサブカル趣味をあれやこれやと押しつけている。そういう歌なのだ。

生きることに君がおびえぬように

 本当のところ、生きることにおびえているのは香菜ではなく他ならぬ男自身なのではないだろうか。泣ける本やカルトな映画を知っていることが「頭を良い」ことだと思い込んでる視野の狭さといい、「〜してあげよう」という謎の上から目線といい、サブカル男の陥りやすい偏った思考回路が良く表現されていると思う。俺も生まれてこのかた人生におびえまくり、映画や本に逃げまくりなのでこの歌に感情移入してしまってしょうがない。聴くたびに心の奥の方を戦車のキャタピラでゴリゴリ踏み潰されてるような気持ちになる。全文化系ボンクラ男のアンセム(ロキノン風に言ってみた)だと思う。

公務員試験に落ちた。これで人生に対するおびえがまた一段と深刻になってしまった。男が泣いていいのは人生に3回っきり。生まれた時、「ガタカ」を見た時、そして公務員試験に落ちた時だけだ。

この前のブログで書いたけど、驚くほど面接に手ごたえがなかったので、気持ち的に諦め半分であったはずなのに、はっきりと不合格という結果を突きつけられるとそれなりにかなしい。当たり前だけど。合格発表のページで自分の受験番号ないのを確認した瞬間、体からエクトプラズム的な何かが抜け落ちていった感覚があった。その時、俺が体重計に乗っていたならきっと21グラム軽くなっていたことだろう。さながら「ハイスコアガール」の3巻ラストに似た絶望。或いは超新星爆発に巻き込まれた巻貝のような気持ち。

落ち込んでる人の書いた文章を読んだことある?本当の本当の本当に落ち込んでる人の。気持ち的には不合格を確認した瞬間がMAXだとすると、少し泣いて一晩寝てこうやってブログに書きながらかなしみは7割くらいに減っている。でも、人生で一番かなしい状態の7割だ。人生で一番というのを軽々しく使うのはアレかもしれないが、初めて付き合ってた女の子にフラれた高校3年生の時と同じくらい落ち込んでる。一年かけてきたことが徒労に終わってしまった。公務員試験はいつも幻のように僕を遠くさらっていくよ。うまくいく公務員試験なんて公務員試験じゃない。公務員試験におちて-Fall in 公務員試験- 。公務員試験は今死んだ。

ボーッとしているとそのまま暗い考えに頭のすべてを支配されてしまいそうになったので「悪魔のいけにえ」をTSUTAYAで借りてきて、見ました。レザーフェイスにチェーンソーやハンマーでやや調子のり気味の若者がバッタバッタと殺されるのを見ながら「これよりはマシ、これよりはマシ…」と思いながら現実逃避。この発想が既に陰キャ。ホラー映画嫌いの俺でも普通に楽しめたのでまごうことなき傑作でした。精神状態にぴったりマッチしていたせいもあるかもしれない。「人生とはかくも不合理で陰惨なものなんだ」という真実を学びました。

それはさておき面接。このシステムがある限り俺は絶対良い方向に向かわない気がする。知らない人と会うのが苦痛すぎる。面接って基本「知らない人と話す」もので、慣れるには「知らない人と話す」経験を積んで練習しなくてはいけないんだと思う。その練習すら怖がってるようじゃ無理だ。かといってそれを補って余りある何かがあるわけでもなし。

イカローリンストーン。マイライフィズピースオブシット。俺の闘いはここからだ。いやもう終わりだよ。頭が良くなりたい。

ああ 気分は死にたい気分だけど

僕は絶対死にたくない……

そこなんだ辛いのは

『東京怪童』望月ミネタロウ

 

生まれたときから分かっていた
人生には今しかないっていうことが
悲しみはいつまでも続くけれど
涙はこぼれるたびに新しい
ぼくにはきみに話してやれる物語がない

目の前の木をみつめるだけで
ふるえるように笑った子どものころ
一日が終わると夢が始まり
そこでは誰もわけもなく生きていた
ぼくにはきみに話してやれる物語がない

いつ死んでもいいと思っているから
ダイヤモンドは雨のしずく
別れのさびしさも映画みたいだ
忘れまいとしても明日はやってくる
ぼくにはきみに話してやれる物語がない

「ダイアモンドは雨のしずく」谷川俊太郎

 

レティクル座妄想

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