コンテンツ化された苦悩

憎み憎まれて生きるのさ

23歳ニートの人生がダメになっていくドキュメンタリーです

ニートが公務員試験を受けてきた話

どうせ勉強したって、貴方みたいな人には公務員になんてなれないし、貴方みたいなやつが公務員になったとしたら、吐き気がする。底辺野郎。一生バイトしてろ。貴方といるとすごくイライラして疲れる。
私は、公務員の彼氏を作って、幸せな家庭を持って、貴方とは違って幸せな人生を送ります。
貴方にもらったものや借りたものは全て捨てる。削除する。本当に無駄な時間だった。最初から最後まで、本当に嫌いだった。一応キープしてたけど、もー貴方はいらないや笑。面倒。

元カノのLINEより抜粋 

 

俺たちは出来ねえのか。俺たちは出来ねえのか。俺たちは何にも出来ねえのか。

テレビのニュースはよ、テレビのニュースはな、テレビのニュースは毎日俺たちは何にもできないって言う。テレビのニュースはな、何だか分かんねえ、何だか分かんねえ記号ばっか持って俺たちのことを不安にさせたかと思うとな、不安にさせたかと思うと、それが大丈夫ですって言う。つまり俺たちは何にも出来ねえって言われてるみたいな気になる。俺たちは何にも出来ねえって毎日言われてる気になる。何だか分かんねえけど不安になっちまう。無理もねえことだ。だけど俺たちは本当に何も出来ねえのか。色んなやつが言う。何にも出来ねえよって。君たちは何にも出来ねえよって色んなやつが言う。本当に何にも出来ねえのか。出来ることあるんじゃねえかって思ってる。俺は出来ることあんじゃねえかって思ってる。君たちだってあんじゃねえかって思ってる。たかだかロックンロールだって言われても、たかだかロックンロールだよって言われても、俺たちにはロックンロールがあるって本当は思ってる。ロックンロールがあって、音楽があって、なんかやれば何か変わるんじゃねえかって思ってる。少なくとも身近なことは世界は変わるんじゃないかって思ってる。身近な世界が変わればちょっとずつ良い方に向かうんじゃないかって思ってる。良い方に向かってほしいと思ってる。悪い方向に向かってほしいと思うやつなんて誰もいない。良い方に向かってほしいと思ってる。だから俺は出来るって思う。俺は出来るって信じる。君も信じるかい。出来るって信じるかい。やるんだよ。やるんだよ。やるんだよ。ロックンロールをやるんだよ。

 サンボマスターのMCより抜粋

 

 去年の春に会社に入社して夏に仕事を辞めて、その夏の終わりに彼女にフラれて、とにかく去年は嵐のような一年だった。仕事を辞めた翌月に公務員の予備校に通い始めた。なぜ公務員なのかと言うと、就活にうんざりしていたのと彼女が公務員だったから「まあ現役公務員のサポートがあれば受かるっしょ」という味覚障がいのあるパティシエが作ったケーキより甘い想定があったからだった。授業料を一括払いにしたら3か月間仕事をやっていた時に貯まったの貯金が丸々ぶっ飛んだ。これで来年落ちたら本当の本当に将来のアテがなくなる。背水の陣。

 

 恥ずかしい話だが、予備校に入って2ヶ月経った後、彼女にフラれた瞬間から驚くほど勉強に対する意欲がなくなった。もとから勉強は嫌いなタイプ。サボりがち。暇を見つけてはBOOKOFFに行ってしまいがちな俺。彼女は情緒不安定なところもあったがどちらかと言えばしっかり者の人で事あるごとに「真面目に勉強しないとだめだよ」みたいなことを俺に言っていた。言われるたびに心の中で「オイオイ冗談きついぜ。あんたは俺のママじゃないんだぜ」と右から左へ受け流してきた。事あるごとというか顔合わすたびに言われていたので俺は本当にダメ人間に見えていたのではないだろうか。でも彼女も別れる寸前には仕事でかなり精神的に参っていて「公務員大変だな」と思った。

 

 公務員の予備校はやけに授業の時間が長かった。大学の授業と違って、真面目に聞かないといけなかったし。こんなに集中して授業を受けたのは受験生以来だった。3時間も人の話を座って聞くのがこんなに辛いものだったとは知らなかった。始めは週1コマくらいだったのに、2ヶ月も通うと週4日授業があったり、1日2コマになったりそこそこめんどくさかった。授業を受けたあとは「問題集を解いて復習するように」と言われていたが、小学生のころ進研ゼミの赤ペン先生をまったく出さなかった俺がそんなハイソなことをするわけがなかった。予備校のない日は家でずっとゴロゴロしていた。唯一の家の外に出る理由だった彼女もいなくなったのでカスパー・ハウザーか鉄仮面の男かと言わんばかりに外に出なかった。

 

 憲法民法行政法・ミクロ経済・マクロ経済・財政学・政治学・数的処理・文章理解・自然科学・人文科学・行政学社会学経営学・時事…などなど。
なんで公務員てこんなに勉強する科目があるんだろう。配られたレジュメが読んでない教科書が、解いてない問題集が俺の部屋で山を作っていた。もうここまで来ると逆にどの科目から復習に手をつけていいのか全く分からないので、予備校から貰ったものの山が日に日にでっかくなっていくことを見守るしかできなかった。無念だった。30万かけて予備校に通ってここまでやる気が出ないのはおかしい。自分の人生を他人事のように消費している感覚があった。頭の中ではヒゲもじゃのポール・マッカートニーが「あるがままに」と歌っていた。このままではつげ義春の「無能の人」みたいに河原で石を売って生計を立てることになる。そんな気がしていた。

 

 去年はぼんやりと日々を過ごしていたらなんとなく終わって、2018年になった。年が明けて予備校のホームルームで公務員試験の科目について驚愕の真実を知る。「公務員試験て教養科目と専門科目に分かれているのか」と。公務員試験に興味ない人に分かりやすく説明すると「体力測定かと思って行ったらデカスロンだった」或いは「腕相撲大会だと思ってエントリーしたら地下闘技場のバーリトゥード(なんでもあり)の試合だった」くらいのやばさ。やはり現役公務員の彼女を失い、予備校でも特に友達ができなかった俺は情報面で圧倒的な遅れをとっていた。「数的処理・文章理解・自然科学・人文科学」までが教養試験で、それ以外の「~学」とか「~法」というのは専門試験にあたる。どの科目がどれくらい出るのか一切把握していなかったので、俺は今まで全部ちゃんとやらないといけないと思っていた。でも、公務員試験て科目多いけど科目ごとに出題される量に著しくバラつきがある。あと問題の難易度も全然違う。聞いてないよこんなの。たとえば「世界史」と「憲法」と「数的処理」の3科目があるとしたら世界史は1問で憲法は5問で数的処理は20問近くあって「偏ってるなあ」と思った。世界史あんなに範囲広いのに一問しか出ないっておかしいと思いますよ!教養試験の問題の中で最大シェアを誇る数的処理というのは脳トレやIQテストみたいな数字や図形の問題であり、日本文学科だった文系脳の俺をいたく苦しめたILLな科目だった。1問3〜4分で解かないといけないのに30分かけても解き方が分からないこともザラで何度心折られたことだろう。あと専門科目も全部完璧にやらないといけないわけではなく、いくつかある中から数科目を選び出して問題を解くというシステムになっていると知った。だから「どうしても苦手な科目はやらなくてもよい」らしい。全科目を準備しておけば、なんかあった時のために安心ではあるらしいけれどニートは安心より目先の楽を取るに決まっている。(その代わり自分の選んだ科目が本番でものすごく難しかったりした場合などに打つ手がなくなるリスクを負う)そこで授業中に講師が何を言っているのか最初から最後まで分からなかったミクロ経済学マクロ経済学を捨てることにした。「餓狼伝」で言うところの

「全科目に100点をとる必要はない」
「100点満点と闘うなら――――」
「20点ずつを―――――――― 六課目」
「合計120点」
「物理的に勝ちは転がり込む」

 という台詞を思い出した。この台詞は複数の格闘技をそこそこのレベルで習得して、一つの格闘技を極めている格闘家に戦いを挑む村瀬豪三という男の言ったものなんですけど。つまり一極集中ではなく総合力で戦えということ。

 

 やる科目がなんとなく把握できたとはいえ、そこから勉強モードに切り替わったとは言い難く、年が明けてからの俺は清涼院流水のJDCシリーズと格闘していた。JDCシリーズというのはミステリ小説の形をした鈍器兼壁に投げつけてストレスを解消するおしゃれ雑貨のことである。ブログのお題でそれを読むことになって、読破するためにかかりっきりになっていた。これはテスト前に何故か部屋の掃除をやりだしてしまう的な逃避行動の一種だと思う。清涼院流水先生の大説に自分の持てる精神力、忍耐力、読解力、記憶力を総動員して挑んでいた。今となってはあの時間とエネルギーを勉強に充てていたらと後悔しなくもない。読んでなくても勉強してなかったと思うが。

 

 ブログを読み返してみると2018年になっても全然勉強していなかった。3月くらいまではダラダラしていた。2月には女の子に会うために3時間かけて静岡に行ったり、同級生の女の子をエロい2本立てのやっている名画座に連れて行って絶交されたりしている。(その時に貸した岡崎京子の漫画はまだ返ってきていない) 3月になったら血迷って創元社エントリーシートを送って速攻で落ちて凹んだりしていた。この辺から「ボチボチやらないとな」という機運が高まっていったはずだ。2月くらいになると予備校の授業が終わり、3~4月に模試があってそれに向けて勉強することになっていたのだが、俺は数的処理の問題集にやっと取り組み始めたくらいだった気がする。専門科目は一番最初に授業があった憲法だけちゃんと問題集をやっていたが、それ以降は一切手を付けていなかった。(夏休み初日だけアサガオに水をやる小学生の感じ) 結果的に模試の成績は目も当てられないというか普通に半分もいかないくらいだった。論文で100点満点中30点を取ったりした。ブログを書いているのにも関わらず俺の文章力はゴミだった。

 

 「受かりたければ問題集を数回繰り返してやってください」と予備校の講師が言っていたけど、もう試験が1~2ヶ月後にやってくるのにそんなことできるわけがないと思ったので、とりあえず教養の勉強は数的処理しかやらないことに決めた。それと並行して一日一科目ずつ専門の勉強をしよう。俺はそう心に誓った。社会学行政学民法などのWack科目(めんどくさい科目の意)に比べると明らかに範囲が狭いので本当の本当に追い込めば一日でなんとなく復習できるので助かった。民法は範囲広すぎて何度も問題集を燃やしたくなったが清涼院流水の『カーニバル』3部作を読破したおかげで忍耐力や集中力が身に付きなんとか終わらせることができたら良かったけど、そんなことはなく普通に終わらなかった。無理。

 

 そんなこんなでみっともなくジタバタした後で5~6月の試験に挑んだのだった。どの試験においても数的処理が時間内に解き終わらず数問を運否天賦に委ねることとなった。だが、奇跡的に一次試験は3つ受けた内の2つ通っていて安心した。これは完全に運だと思いました。公務員試験は5つの選択肢から1つ選ぶ択一式だったので、運否天賦に委ねた部分がたまたま当たっていたのだろう。ミッション系の高校で毎日讃美歌と主の祈りを捧げていた3年間が功を奏した。

 問題となるのは、2次試験の「面接」である。

 

 正直に言うと、この面接で俺は「終わった」という感触があった。一年間自宅に閉じこもってYoutubeでフリースタイルバトルとバーチャルYoutuberの動画しか見ていなかった社会不適合者に面接試験は大きな壁となって立ちはだかった。面接前は「8mile」のオープニング並みにトイレにこもり自分を奮い立たせ、面接中は「8mile」の最初のバトルのエミネムくらい口ごもった。LOSE MYSELF。なんていうんだろう。m-1の決勝で東京ダイナマイトが刀持ってきたときの空気。面接中ずっと「ベルセルク」の蝕みたいな絶望感があった。地獄の30分。終わってから数時間心臓がばくばく鳴ってた。まっすぐ帰りたくなくて友達を呼びつけて重版前で品薄になっている「呪術廻戦」を探しに行った。3時間かけて本屋を8店舗くらい歩いて回ってようやく手に入れた。友達とバイバイして電車で買ったそれ読んでたら何故か涙があふれて止まらないわけですよ。スーツ着たニートがえぐえぐ泣いてて安っぽいインディーズ映画によくある演技みたいでしたよ。「呪術廻戦」の面白さと、呼べばすぐ来る友のありがたさと、己のふがいなさが心に突き刺さった夜でしたよ。一年ぶりに目上の人と話す緊張感と、人見知り過ぎて予備校の模擬面接に行かなかったのが良くなかったのかな!?とにかく俺の公務員試験が終わった。そんな感じで今は2次の結果を死にそうになりながら待ってるところなのです。

 

 ろくに練習もせずぶっつけ本番で面接に臨めば玉砕するのは目に見えていたのに、どうしても知らない人と会話するのが怖くて模擬面接行けなかった。仮に落ちたとしても100%自分が悪い。「人生が上手くいかない」とかブウブウ不満たれてるけど、能動的に自分の人生を良くしようという気合が湧いてこない。この土壇場でさえ面接の練習をサボってしまう。「どんくらい人はダメになれるのか」のチキンレースをしているのだろうか。こんな人生の大一番でブロガー根性見せなくていいよ。つまんなくていいから面接試験をそつなく無難にこなしたかった。世の中にはたくさんの「一発逆転」の物語があふれている。学年でビリだった女子高生が慶應大学に受かるだとか、オタク青年が電車で痴漢から助けた女の人と付き合うだとか、不良ばっかりの弱小野球部が甲子園に行くだとか、気まぐれにマッチアップされた4回戦ボクサーが全米チャンピオン相手に善戦するだとか、コールガールがハンサムな実業家にプロポーズされるだとか、いじめられっ子がカラテを修行していじめっ子と試合するだとか、貧弱だった青年が超人血清でムキムキになったりだとか、いじめられっ子がクモに咬まれて超能力を身に着けたりだとか、科学者がガンマ線を浴びて緑のモンスターに変身したりだとか、プレイボーイの武器会社社長がテロリストに拉致されてパワードスーツ着て戦うだとか…色々あるじゃないですか色々。

 なのにニートが公務員になる」っていう「一発逆転」は地味なくせに、なかなかどうして手が届かないんです。リアルに難しい。筆記試験通っても面接あるし。安定の職業かもしれないけど、入るまでがギャンブルすぎる。働いていたとき会社で先輩から「お前もお前を育てた親もクズ」とまで言われた俺でも予備校通って一年ダラダラ勉強してれば、筆記はどうやら受かる。でも、面接は厳しい。

 

 このニート生活一年間の総括として、何を思うかといったら「なぜ自分はちゃんとできないのだろうか」と、その一言に尽きる。今はまだ公務員試験の結果を待つことで色んな結論を先延ばしにしているが、受かろうが受かるまいが(というか多分受かってないと思うが)自分の根っこにパンクスピリッツとでも呼ぶべきヤケッパチでノーフューチャーな部分があるというのは問題だ。日々うわの空。できることなら地に足つけてちゃんと税金を納めて生きていきたい。そのために公務員なんていう安定の職業を目指してみたがいかんせんヘタレ。困ってる人に手を差し伸べるどころか、自分の生活すらふわふわしてるのにそんなことできるわけないじゃんね。「ニート」は、どうやらこれは、喜劇名詞のようです。いまは自分には、幸福も不幸もありません。ただ、一さいは過ぎて行きます。自分がいままで阿鼻叫喚で生きて来た所謂「人間」の世界に於いて、たった一つ、真理らしく思われたのは、それだけでした。
 ただ、一さいは過ぎて行きます。
 自分はことし、二十三になります。

 

道半ば あきらめた奴ら
ハード過ぎて箸投げた奴ら
都会に飲まれた奴ら 今じゃ連絡も途絶えた奴ら
今どうしてる? 気になるぜ
夢もって生きてくんねぇ?粋がって
俺の方なら相変わらず
誰も止めらんねぇハイパーな奴

「Street Dreams」 ZEEBRA

 

どれだけクサれば晴れるだろう
止むかよ 時間切れ
まんまと潜りこみ 閉じ込めて
君と最悪の人生を消したい

実験4号theピーズ

 

 

呪術廻戦 1 (ジャンプコミックス)

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