コンテンツ化された苦悩

憎み憎まれて生きるのさ

23歳ニートの人生がダメになっていくドキュメンタリーです

女の子に貸した漫画は永遠に返ってこない

「お前はお喋りが退屈でないのか」
「あたりまえさ。誰だって喋っていれば退屈しないものだよ」
「俺は喋れば喋るほど退屈するのになあ」
「お前は喋らないから退屈なのさ」
「そんなことがあるものか。喋ると退屈するから喋らないのだ」
「でも喋ってごらんよ。きっと退屈を忘れるから」
「何を」
「何でも喋りたいことをさ」
「喋りたいことなんかあるものか」

桜の森の満開の下坂口安吾

 

 横浜駅スターバックスにてこの文章を書いている。アイスコーヒーのトールを飲みながら。土曜日の午後なのでやたら人が多い。激混みのスタバの中、タブレットPCで作業するマザファッカの仲間入りした高揚感(さすがにmacではないけれど)。最近、少しずつ暖かくなってきてもう春。花粉かわからんけど鼻水がやばい。スタバで書いてるのにブログがおしゃれにならない。鼻水がやばいってなんだ。

 

 女の子に貸した漫画が返ってこない。すこし仲良くなったと思ったらほいほい漫画を貸してしまう俺がいけないのだけど、貸してる間に疎遠になってしまって、返ってこないパターンがほとんどで困る。思えばいろいろな人にこれまで漫画を貸してきた。高校の時、初めて付き合った女の子がかなりの漫画好きで、その影響で俺も漫画を色々集めるようになったんだった。初めて家に遊びに行ったときベッドの下から100円ショップの漫画ケースを十数個ぶわーっと取り出してきて度肝を抜かれた。人並みに漫画を読んできたほうだと思ったけど、こんな漫画集めてる女子がおるのかとカルチャーショックを受けた。その女の子から『HUNTER×HUNTER』を借りて、ヨークシン編のウヴォーギンVSクラピカにおける冨樫の天才っぷりについて語り合うのがめちゃくちゃ楽しくて、人に漫画借りたり貸したりする楽しさに目覚めた。中学までよく漫画の貸し借りしてた友達は『ボボボーボ・ボーボボ』とか『ヘルシング』とかそういった変化球ばっかだったので『HUNTER×HUNTER』の衝撃はすさまじかった。「彼氏の影響で少年漫画にハマって~」とかいう女の子はよくいるけど、そういうのってどうなんだ。どこまでディープな趣味まで付き合ってくれるんだろう。彼氏に『ザ・ワールド・イズ・マイン』とか『殺し屋1』とか『餓狼伝』とか『シグルイ』とか『喧嘩稼業』とか『WATCHMEN』勧められてもハマっていくのだろうか。「彼氏の好きなものは私も好きになりたい」的なスタンスの女の子と付き合ったことがないからいつも無理やり貸してる気がする。迷惑だな。

 

 穂村弘がエッセイの中で、ラブホテルで大島弓子の『たそがれは逢魔の時間』のセリフを一緒に暗唱し合ったとか彼女の部屋でしりあがり寿の『夜明ケ』を読んで感動したとかそういうエピソードを紹介していて文化系ボンクラの俺としてはいたく憧れたものだった。でも、女の子に漫画貸して「良かった」みたいに言われることあんまない。むしろ貸してる間に喧嘩したり、疎遠になったりすることが頻発してどうしようもない。もし女の子と付き合ったらよしもとよしともの『ライディーン』とか読んでいただきたい。俺からよしもとよしともの『ライディーン』借りて読んでくれる女の子いねーかな。

 

 前の彼女には『子供はわかってあげない』を貸したままフラれたし、その子には『げんしけん』も貸して結局読まずに返されたこともあって悲しかった。『おやすみプンプン』みたいな不健康な漫画を読むくらいなら『げんしけん』を読んで欲しかった。tinderで最初に会った女の子には舞城王太郎の『好き好き大好き超愛してる』を借りパクされかけたけど、貸してから2ヶ月過ぎても読んでないっぽかったので、『闇金ウシジマくん』の取り立て並みにプレッシャーかけて、どうにか取り返した(返してもらった後に即LINEブロックされた)。女の子って男より漫画読むの遅くないですか。たまに男でも全然返さないやついるけど。大学の時のサークルの同期に『バイオーグ・トリニティ』をそれまでに発売された6巻くらい貸したらそのあと一年くらい返ってこなかったことがあって、その時もしつこく催促してたら返ってくるときに新刊出てる分を2冊買って返ってきて「そのお詫びの仕方新しいな」と思った。自分でも普通に新刊追ってたんでお詫びの分のその2冊がダブってちょっと困ったけど、友情の証としてなんとなく取っておいてる。中学の時のある友達は家庭内ルールで漫画禁止のために朝に貸した『ジョジョの奇妙な冒険』数巻を帰り道の間までに読んで返すというTSUTAYAもびっくりの当日返却してきて、そいつくらいにみんな早く読んで返してほしいですね。すぐ感想を聞きたいから。

 

 エセ漫画ソムリエ気取りの貸したからには絶対感動してもらいたいという押しつけがましさが良くないのかなと思う。俺が暑苦しく勧めるせいで傑作との自然な出会いを邪魔してしまってるのかもしれない。というかそこまで漫画も詳しい方じゃなくて中高生時代に友達と遊びに行ったりする健全な青春を送れなかったため、BOOKOFFで暇つぶししてる時間が人より多かっただけである。あと『ドラゴンボール』通しで読んだことないので漫画好き名乗る資格ない。

 

 前にブログに書いたけど、tinderで知り合った静岡の女の子に古谷実の『ヒミズ』を貸して、その女の子にもう一回会うことになって「『ヒミズ』まだ読み終わってないけど新しい漫画貸して」って言われて「今借りてるの読んでないのに新しいの借りるってすげえな」と思いつつ、幸村誠の『プラネテス』という漫画を貸した。人に漫画貸すときって「サクッと読めるようになるべく短い巻数で完結してるのがいいかな」とか「ハイセンスに思われたいな」とかいろいろ考えながら本棚とにらめっこするわけで、そのなかでも『ヒミズ』と『プラネテス』はかなりの鉄板チョイスなんで、「こりゃ勝負あったな」て感じでドヤ顔で貸したけど、結局そのあとなんとなくその女の子のことを嫌いになってしまって連絡先を消したので、その子の『ヒミズ』と『プラネテス』の感想を聞くことも、『ヒミズ』と『プラネテス』が返ってくる機会も失われてしまった。借りパクというより俺の貸し逃げという意味不明な行動になってしまった。嫌いになった理由はいろいろあるけど、その子のせいというよりは静岡県という場所がよくなかった。ものすごく遠くて電車に3時間くらい乗らないといけないし往復の電車賃が5千円くらいかかる。あと途中バスに乗らないといけなくて、そのバスも両替のプレッシャーでお釣り取り忘れたりして、バスが苦手な俺はもう凹みにへこんだ。元カノの家は電車で2時間くらいでそれでもかなり嫌だったのに、元カノよりかわいくない女の子に会うために3時間かけるのがバカバカしくなったという理由もある。1回目に会った時はそこそこ楽しかったのに2回目に会うと「ここはちょっと」という点がちらほらと見つかって、やりきれん。こうやって理由を挙げているとかなり身勝手だけど、3時間の電車移動というのは人を身勝手にさせるものなのだ。どうあがいても「3時間かけてわざわざ会ってる」みたいな気持ちになってしまうので、俺はどうもそういう距離的なものに人間関係を制限されるタイプらしい。

 

 tinderでやたら出会いを探していたのも、元カノに別れ際にボロクソ言われて、「俺のことを受け入れてくれる女の子なんてこの地球上にいやしないんだ」とかいう変な被害妄想に憑りつかれたためで、そのせいでさみしくてどうしようもなかったけど、少なくとも静岡県にいる女の子とは懇ろになれたので、もうどうでもいいかという気持ち。これも賢者タイムの一種なのだろうか。あとtinderとは別に会って見た目褒めてくれた人がいて、それもかなりうれしかったから自信を取り戻せた感がある。社交辞令かもしれないけど、褒められたらすぐいい気になります。ニートと懇ろになってくれる女の子なんて冥王星の果てにいるかと思ったら、電車で3時間のところにいました。それでも俺にとっては遠すぎて会いに行くのめんどくさいから困ってしまう。

 

 こうやって女の子に会って漫画を貸してそのまま疎遠になって…を繰り返し続けたらいつの日か本棚が空っぽになるのではなかろうか。ポール・オースターの『ムーン・パレス』に主人公がお金に困って自分の部屋の本を片っ端から売っていく場面があったけど、俺は漫画を貸し続けて異性とのつながりも途絶えていって、踏んだり蹴ったりという感じです。

 

 岡崎京子の『リバーズ・エッジ』が最近映画化されて、「観たいなあ」みたいなことをたまたま連絡とってた女の子に言ったら「原作読んでみたい」と言われて「じゃあ貸すよ」ってまた俺の漫画貸したがり癖がさく裂した。勧めた漫画がどんなに面白かろうが、傑作だろうがそれはすべてその作品を作りだした漫画家のおかげなので、貸したやつがいい気になったりするのはお門違いなのだけど、こればかりはやめられない。もしかしたら「こんな面白い漫画を知ってるなんて…かっこいい」と思われるかもしれない。その可能性が1%でもある限り、貸さないわけにはいかんでしょうが。

 

 まだ出会ってないけど、これから出会うかもしれない女の子を感動させるために5巻以内に完結するおしゃれな漫画を俺はこれからも探し続ける。男に貸す漫画は大体伊藤悠の『皇国の守護者』を貸しとけばいい。だってアレめっちゃおもしろいから。なんだかんだいって5巻以内に完結する漫画で一番面白いの『皇国の守護者』か松本大洋の『ピンポン』説ない? あると思います。そういえばこの前急に冨樫の『レベルE』めちゃくちゃ読みたくなって、部屋探したけどどこにもなくてストレスがやばい。多分これは男の友達に貸したっきり帰ってきてないパターン。誰に貸したのか覚えてないけどはやく返してほしい。

 

 

レベルE (Vol.1) (ジャンプ・コミックス)

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