コンテンツ化された苦悩

憎み憎まれて生きるのさ

23歳ニートの人生がダメになっていくドキュメンタリーです

ニートが劇場で「龍の歯医者」を見てきた話

デビュー作からのファンだけど別に発狂してないよ。
もともと「いーから皆密室本とかJDCとか書いてみろって」「ウンコパ〜ン、デ、デレッデ」ってよく言ってたし、
舞城王太郎に振り回されるのは馴れてるし。
こんな奴だけど好きなんだからしょうがない。
型に嵌らないのが舞城王太郎だしね。
プライベートは太田克史が支えればいい。
私達は舞城王太郎文楽=魂を支えるから。
その魂は私から子供へ、子供から孫へと受け継がれていくし、
そうやっていつか舞城王太郎のDNAと混ざり合うから。
それがファンと舞城王太郎とのEternalだし。

 

あらすじ
彼の国には龍が棲んでいる──
神話によれば、古の人々との契約により、龍は人を助け、人は龍を助けるという…
舞台は “龍の国”。
主人公は、国の守護神 “龍”を虫歯菌から守る新米・歯医者の野ノ子。
隣国との戦争が激化する中、ある日彼女は、龍の歯の上で気絶した敵国の少年兵を見つける。
少年の名はベル。
大きな災いの前に龍が起こすと言われる不思議な現象で、巨大な歯の中から生き返ったものだった。
自らが置かれた状況に戸惑うベル。そして彼を励まし、彼を龍の歯医者として受け入れる野ノ子。
激しい戦いに巻き込まれながら、二人はやがて自らの運命を受け入れて行くことに…

  

  舞城王太郎好きを名乗るからには、観に行かないわけにはいかないだろうと新宿のバルト9へ参上したのが最終日。もっと上映したての頃だったらでかいスクリーンで観れたのに最終日にもなると小さなスクリーンだった。くやしいけど、しょうがない。土壇場になるまで観に行くか迷っていたし。テレビで放映されたのを録画して何回も見てるのにわざわざ同じ映像を交通費かけて東京まで観に行く必要あるのか?俺はニートなのに、舞城王太郎の追っかけをしてる場合じゃないのでは。いや冷静になったらおしまいだ。舞城王太郎 a GO!GO!こんな機会はもう無いかもしれないし、ここで見なかったら一生後悔する。よし、行くか。新宿駅からバルト9に向かう途中、無印良品でアーモンドオイルで手の保湿をした。無印良品を見かけるたびにテスターのオイルで手の保湿をしてしまう習慣が俺にはある。手がしっとりしたので良い気持ちでバルト9にたどり着いた。新宿駅の映画館はシネマカリテか武蔵野館かピカデリーしか行ったことなかったのでバルト9はまだ未踏の地であった。チケットを見せてシアター入る前に入場者特典の色紙を貰った。最終日なのにまだ余ってるってよっぽど人が来てないのかなと心配になった。いざ鑑賞。何回も観ていた話だけど、劇場で見ると音響の迫力がすごかったので、元はとったなという感じがあった。

 

  せっかくなので、「龍の歯医者」の感想をひとつ書き残しておこうかなと思ったけど、あれこれ悩んでいるうちに一週間が経ってしまった。どうにも書きあぐねる。本編、何回観てもよく分からない場面とかあって、それについて解釈とかめたふぁーとかそういった小難しいことを書きたいなと思ったけど、頭が悪いからうまく文章にできない。好きなシーンの話とかします。

 

   DAOKOの「かくれんぼ」が流れてるところが好き。なりゆきで龍の歯医者やらされることになったベルがちょっとずつ歯医者連中と馴染んでいく雰囲気が絵から伝わってきてほほえましいったらないよもう。何回見ても多幸感がやばかった。ベルがかわいいんだ。ベルが。舞城王太郎の書くキャラでここまでヘタレキャラって珍しい?言葉抜きで登場人物たちの関係性、距離感が深まっていくの観客にそれとなく示せるのがアニメの良いところだなあと。曲の最後のほうで歯医者たちが並んで夕陽を眺めてるシーンの青春っぷりよ。もうマブダチやんけ。良かったなベル、となった。

 

  あと最後のベルが死ぬときのナレーションは舞城王太郎節が炸裂していたし、何よりベル役の声優の演技がすごかったとおもう。淡々と読んでいるのに心揺さぶられるというか。殺戮虫大暴れが作品のムードをどん底まで落としてからああいうナレーションを入れられると涙腺にくる。泣くわ。アニメなのに最後にドラマ部分にきゅっと落とし前つけるのが「言葉」っていう。舞城王太郎め、良いところかっさらいやがって。

 

  ベルの他に好きなキャラは佐藤修三か。最初当たりきついしすぐ憎まれ口たたくしうざい先輩感あるけど、ベルに手を差し伸べる場面とか見るに超面倒見良いやつ。最後の最後に漢見せるのがマジ兄貴。修三が死んだあとにベルが献杯で憤るのも良い。本編の中では少ししか描かれてなかったけどちゃんと君たち仲良くなっていたんだね、て思っちゃう。

 

  「龍の歯医者」初めて見た時、斬新だなーって思う部分とどっか懐かしいって感じる部分が両方あって、斬新だなと思ったのは龍の歯の中を死者の魂が通っていくって設定。まったく意味がわからない。なんで歯なんだろう。奇想すぎる。歯の中に入ると「キタルキワ」を知ることが出来るっていうのも面白い。死者の魂が通る歯の中に行くってことは一回死ぬのと一緒なわけでしょ。ベルみたいなイレギュラーな黄泉がえりであっても有無を言わせず歯医者に任命されるってことは「一回死ぬ」っていう行為が歯医者の仕事にどういう意味を持つのか。虫歯菌が死んだ人の感情が生み出した荒魂だとするとそれを退治するのに一回死んで蘇ったことによる霊的な力が必要になるとか?龍の歯医者の身体能力がやべーのも龍の近くにいると力を貰えるからっぽいし。あの変形する武器もなんなのだろう。あのままずっと働いてたらベルもあの武器もらえてたのか。前編の天狗虫を退治する所はまるでモンハンみたいに戦ってて面白かった。修三がシビレ生肉。

 

既存の作品を思い出してしまうような部分があちこちにあって、俺のなんとなくの連想かもしれないけどそこが懐かしかった。

そのうえで、「エヴァ」のファンのみなさん向けにひとつ。
野ノ子たち歯医者が日々退治している「虫歯菌」が出て来るのですが、その虫歯菌がちいさい「使徒」みたいなんです。味というか…「やっぱスタジオカラー作品はこれじゃなきゃ!」っていう要素がいっぱい出てきて。それは「エヴァ」の作風からつながっている感じがあって。たまたまなのか狙いなのかわかりませんが、ちょっと嬉しいですね。
虫歯菌がニュモニュモって出てきたら「待ってました!」って、ちょっとコアを探しちゃうような気持ちになりますよ(笑)。

夏目柴名 役
声優 林原めぐみ 

  林原めぐみさんはインタビューで虫歯菌がエヴァ使徒に似てるって言ってたけど、俺はエヴァっぽいとはそこまで思わなかったな。殺戮虫が暴れてる場面は旧劇みたいだったけどそれくらい。

 

千と千尋の神隠し

 泣きながらおにぎりを食べる所が似てると思った。異常な状況に陥って混乱してるのを食事がいったんフラットな状態にしてそっから感情が溢れてくるみたいな演出。超常的な存在を日常的な所作で世話をするっていう部分。それが「千と千尋の神隠し」はお風呂で、「龍の歯医者」は歯の掃除。あと歯医者の住んでる建物の感じがまんま千が寝泊まりしてた部屋に似てる気がする。大部屋で雑魚寝するあの感じとか。舞台は超ファンタジーなのに日々の生活にどことなく合宿っぽさがある。あと龍の歯が怪我したときに血がドバーッと出て歯をロープで支えようとするところとかも「千と千尋の神隠し」の腐れ神の自転車引っ張り出すシーンを思い出してしまった。ベルが千尋なのかな。

 

皇国の守護者

  漫画版しか読んでないのであまり詳しくないけど、龍と人とが契約してて、その契約が戦争に関わってくるという設定。日本とロシア風の国架空戦記であることとか。軍艦とか機関銃がある時点で「龍の歯医者」のが近代よりだけど。階級だけのボンボンが敵地のど真ん中で怪我人を世話してて逃げ遅れるっていうシチュエーションは共通してる。階級はないけど部下の心を掌握してるカリスマ軍人がそのボンボンを殺すことになるところとか。「皇国の守護者」漫画版だと龍はまったく戦争の手助けしてくれないけど、「龍の歯医者」だとガンガン軍事利用されてるな。背中に軍艦みたいなのが色々くっついてるし。龍の力ってなんなんだろう。ブランコたちが「銃が使えなくなる(暴発する)」みたいなこと言ってたけど、そんな便利能力あったらそりゃ強いわな。人の魂や死の運命を司る神様みたいな存在なのにかなり一方的に龍の国の人間が使役してる風なのが気になる。それも親知らずで契約してるおかげなのか。

 

 あとは、舞城王太郎の今までの作品の要素もわりと散りばめられてました。

ベルが言及する馬(舞城作品だと衝動とか生命力について語る時によく登場する気がする)とか柴名姉さんの「人は何かを選択しながら生きている」っていう台詞(『みんな元気』)とか光る虫歯菌(『好き好き大好き超愛してる』のASMA)とか、ああそう言えば『ビッチマグネット』で「人のゼロは骨なのだ。」という文章があるけど、「龍の歯医者」において死者の魂が行き着く場所が歯の中なのと関係があるのだろうか、など。

 

  1番気になったのはベルの拳銃が物語の要所要所で意味ありげに登場するのには、どんな意味があったのだろうか。「そんくらい考察しろよ」って言われてるみたいでくやしいけど、まったく分からない。ベルの最初の死によって失われた尊厳とか誇りとかそういったもののメタファー?だとするとせっかく取り戻したのに1番最後にポイっと投げ捨てられたのが悲しい。でも歯の中を通りすぎるときに重かったり要らなかったりしたものが遺品として歯から出てくるんだっけ。拳銃を取り戻したことが重要であって、拳銃自体はベルにとって余計なものだったてことかな。死体も消えて(これも謎。黄泉がえりだから?)誰にも死んだことに気づかれないベルが切ない。

 

 この街は悪疫のときにあって 僕らの短い永遠を知っていた

僕らの短い永遠

僕らの愛

僕らの愛は知っていた 街場レヴェルののっぺりした壁を

僕らの愛は知っていた 沈黙の周波数を

僕らの愛は知っていた 平坦な戦場を

僕らは現場担当者になった 格子を解読しようとした

相転移して新たな配置になるために

深い亀裂をパトロールするために

流れをマップするために

落ち葉を見るがいい 涸れた噴水をめぐること

平坦な戦場で 僕らが生き延びること

『THE BELOVED(VOICES FOR THREE HEADS』 WILLIAM GIBSON

 

 

「龍の歯医者」 Blu-ray 通常版

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