コンテンツ化された苦悩

Boy neet Girl (そして人生は続く)

22歳ニートの人生がダメになっていくドキュメンタリーです

2ヶ月で仕事辞めた2017卒の僕がなぜ辞めたのかを説明する

__「つまんない」なんて言ってもしょうがない。僕たちは運悪く歴史のそういうステージに生まれついてしまったんだから。
 22世紀まで僕たちはマイニチマイニチ朝7時に起きて、学校や会社に通って、とりとめのないムダ話を繰り返す。学校では英単語や歴史の年号を何度も何度も暗記して、会社では「つまんねー」なんて言いながら、本当につまらない仕事を1週間・1ヶ月・1年なんていうサイクルで何週間も何ヶ月も何年も繰り返す。
 延々と最先端スポットができ続けて、延々と政治家は汚職をし続けて、テレビの中は延々と激動し続ける。だけどテレビのスイッチを消してまわりを見回すと、いつもとなんにも変らない毎日があるだけだ。
三島由紀夫は自伝的小説『仮面の告白』のなかで、「戦争より日常生活のほうが恐ろしかった」って書いた。僕たちはガマンにガマンを重ねながら、この「身震いするほど恐ろしい日常生活」を生きていく。得体の知れない「安定した将来」をしっかりと引きつけておくために。一歩一歩慎重にコースを踏み外さないように気をつけながら。
テレビのドラマみたいなハッピーエンドはない。ただグロテスクな「ハッピー」が延々と続いていくだけだ。延々と続く同じことの繰り返しがあるだけだ。そう、キーワードは「延々」と「繰り返し」だ。
 生きてたってどうせなにも変わらない。これからどの程度のことが、世の中や自分の身に起こるのかもわかっている。「将来!将来!」なんていくら力説してもムダだ。あなたの人生はたぶん、地元の小・中学校に行って、塾に通いつつ受験勉強をしてそれなりの高校や大学に入って、4年間ブラブラ遊んだあとどこかの会社に入社して、男なら20代後半で結婚して翌年に子供をつくって、何回か異動や昇進をしてせいぜい部長クラスまで出世して、60歳で定年退職して、その後10年か20年趣味を生かした生活を送って、死ぬ。どうせこの程度のものだ。しかも絶望的なことに、これがもっとも安心できる理想的な人生なんだ。__

完全自殺マニュアル鶴見済[1993]太田出版

 

 何回もブログに書いてあるんですが、ぼくは4月に入社した会社を6月に辞めて、今はニート状態でだらだらと家で映画を観たりブログを書いたりしてる。社会人の中では「新卒はまず3年働け」なんて格言があるが、僕は3年どころか3ヶ月ももたなかったわけだ。会社を辞めてみて冷静に考えてみると自分の状態が世間一般の「ふつう」とあまりにもおおきくかけ離れてしまって「落ちこぼれてしまった」という実感がひしひしと湧いてくる。普通に考えて会社を短期間で辞めるということは「自分」か「会社」に問題があると言っていいけど、僕の場合、自分が悪いのか会社が悪いのかうまく判断ができない。僕が仕事を辞めたのは職場の人間関係の構築が十分にできなかったからだ。

 

 というよりある先輩に目をつけられて暴言や暴力をふるわれてそれに耐えられなくなり退職を決意した、というのが正確な理由である。何より我慢できなかったのがそういった行動をその先輩だけでなく、会社自体がなんとなく容認してる空気があった。ああ、この会社にいる限り精神面、肉体面において苦痛を強いられる状況に身を置くこととなるのかと痛感した。先輩に「おいカス」と言われて胸ぐらをつかまれたときや「お前のこといつかボコる」と言われたとき、僕の脳内にいかりや長介が現れてこう告げた「だみだこりゃ」と。

 

 先輩になぜそこまで嫌われたのかというとこれは間違いなく、僕があまりにも仕事ができなかったせいだ。入社した僕は営業に配属されたが、辞めるまでのあいだに大小さまざまなミスを重ねに重ねてミルフィーユ状態だった。営業車を壁にぶつけて壊す。死ぬかと思った。見積書の書き方が分からないのは当然として、ハンコひとつきれいに押せないのは参った。「さいきんのゆとりはハンコひとつまともに押せないのかよ」とゆとり世代の評判を著しく貶めることとなった。先輩にキャバクラに連れて行ってもらっても「全然楽しくなかった」のでお礼をないがしろにして、ものすごく怒られたりした。喋りが下手すぎて取引先に出入り禁止を言い渡されたりもした。そのたびに先輩から「お前ほど使えない人間はいない」「お前を生んで育てた親もカスだな」「バカのくせに自分のこと頭いいと思ってんだろ」など愛のあるお言葉を頂戴した。

 

 気がつくと毎日通勤電車で泣きながら神聖かまってちゃんを聴くようになっていた。「向いてねーな、俺」と思った。意を決してその先輩のいないときに人事に相談した。まさか2ヶ月目にして「退職したい」という相談を新入社員がしてくるとは思わなかっただろう。「もうすこしがんばろう」というようなことを言われ、引き止められたが「いえ、もう無理です」の一点張りで押し通した。一週間後くらいに部長、社長にも「辞めたい」という旨を伝えた。ものすごく残念そうな顔をされた。当たり前だ。2ヶ月で仕事を辞めるって言ってるんだから。辞めることが決まってから仕事を一切振られなくなったので自分の机でひたすら時間をつぶすことになった。恥ずかしくて死にたくなった。

 

 会社の人はみんないい人だったと思う。暴力をふるってきた先輩も俺がもっと仕事のできて人当たりの良い人間だったら違った接し方をしてくれたはずだ。俺は自分の無能を理由にたった2ヶ月で仕事から逃げ出してしまった。そして仕事というものに向き合う力すら社会のどこかに放り投げてきてしまった。ひとつの会社のたった2ヶ月間でこんなに打ちのめされると思わなかった。

 

 俺、社会とか会社とかもういいかなという感じがある。新国立競技場の現場監督の過労自殺とか豊田議員の秘書に対する「このハゲ―!!」発言が世間を騒がせているがそういうニュースを見るたび、悲惨だなという感想よりまず「でも、この人たちはこんな地獄みたいな所でも俺みたいに2ヶ月で辞めてないもんな」と自己嫌悪に陥ってしまう。俺がいた会社なんて事件になってるところと比べたらそんなひどいところじゃなかったけど、どうしても続けることができなかった。

 

 普通の人生が就職した会社に長く務めることだとしたら、俺はものすごく異常な人間になってしまう。しょうがない。新卒にとって仕事なんて職場の人間関係がほとんどすべてだし、人間関係に恵まれてる職場にたどりつくか、自分を殺して職場に適応するしかない。人間関係でうまくいかなくて、それを我慢する根性もないなら、すみやかにドロップアウトして別の生き方を探さないとだめなんだ。

 

 ちなみに僕のことを嫌って色々かわいがってくださった先輩は前科があるらしく、それを自慢げに言ってくるのがすごくストレスたまった。社会ってクソだなって心の底から思った。

 

そして出し抜けにフィービーは言った。「ねえ、どうしてそんなことになっちゃったのよ、まったく?」。つまり、どうしてまた学校を追い出されちまったのかっていうこと。そんな言い方をされると、僕はなんとなくうらぶれた気持ちになった。

 「ああフィービー、頼むからそんなこと訊かないでくれよ。みんなに同じことを訊かれて、ただでさえうんざりしてるんだからさ」と僕は言った。「そこには百万くらいの理由があるんだ。あれは僕が行った中でもどん底の学校のひとつだった。なにしろインチキな連中がうようよしているんだ。それから根性の悪い連中。あんなに根性のねじ曲がったやつらが勢揃いしているところってまずないね。たとえば君が誰かの部屋でおしゃべりしていたりするね。それで誰かが中に入りたがっているとする。でもその誰かが、にきびだらけの鈍くさいやつだったりするとさ、ぜんぜん入れてやらないんだ。中に入れてくれっていうやつがいると、みんなしっかり自分のドアに鍵をかけちまうんだよ。それから秘密のクラブみたいなのもあった。僕は軟弱だから、入会の誘いを断ることができなかったんだけどさ。で、ロバート・アックリーっていうにきびだらけの、まっしぐらに退屈なやつがいて、こいつがそのクラブに入りたがっていたわけさ。なんとか入れてもらおうとやっきになってたけど、みんなはとうとう入れてやらなかった。退屈でにきびだらけのやつだから、というだけの理由でね。気分がささくれるからその話はあまりしたくないんだけど、あれやこれや、とにかく悪質な学校だったんだよ。誇張抜きで」

村上春樹訳「キャッチャー・イン・ザ・ライ」 

 

 

 

よく生きてきたと思う
よく生かしてくれたと思う
ボクのような人間を
よく生かしてくれたと思う

きびしい世の中で
あまえさしてくれない世の中で
よわむしのボクが
とにかく生きてきた

とほうもなくさびしくなり
とほうもなくかなしくなり
自分がいやになり
なにかにあまえたい

ボクという人間は
大きなケッカンをもっている
かくすことのできない
人間としてのケッカン

その大きな弱点をつかまえて
ボクをいじめるな
ボクだって その弱点は
よく知ってるんだ

とほうもなくおろかな行いをする
とほうもなくハレンチなこともする
このボクの神経が
そんな風にする

みんながみんなで
めに見えない針で
いじめ合っている
世の中だ

おかしいことには
それぞれ自分をえらいと思っている
ボクが今まで会ったやつは
ことごとく自分の中にアグラかいてる

そしておだやかな顔をして
人をいじめる
これが人間だ
でも ボクは人間がきらいにはなれない

もっとみんな自分自身をいじめてはどうだ
よくかんがえてみろ
お前たちの生活
なんにも考えていないような生活だ

もっと自分を考えるんだ
もっと弱点をしるんだ

ボクはバケモノだと人が言う
人間としてなっていないと言う
ひどいことを言いやがる
でも 本当らしい

どうしよう
ひるねでもして
タバコをすって
たわいもなく
詩をかいていて

アホじゃキチガイじゃと言われ
一向くにもせず
詩をかいていようか
それでいいではないか

 

「よく生きてきたと思う」 竹内浩三

 

 

うんざりなんて してて当たり前
絶望なんて してて当たり前
あきらめるのは簡単だ
簡単すぎてつまらない 

 

 「一人で大人 一人で子供」THE HIGH-LOWS

 

 

ちょっと今から仕事やめてくる (メディアワークス文庫)